小学館外国語辞典の編集部にも電子書籍リーダー、Kindle(キンドル)が来ました。実際に使ってみた感想をご報告します。
機械としてのキンドルについてはすでに多く語られているので、「本」としてのキンドルについて感じたことを中心にします。
↑これがキンドル。使わないときは作家の肖像などが表示される。
↑メニュー画面。
まず画面の感想から。E inkという技術を使っているそうで、液晶の画面よりは目に優しそう。文字を大きくすることができる点は、目が悪くなった世代にはありがたいことでしょう。ただし、背景が灰色で、その上に黒い文字が載っているのには違和感があります。また、ページをめくると文字がぴかっと光ったようになるのには、最初驚きました。
不便な点もあります。キンドルの画面で動くカーソルを操作するボタンはとても使いやすいとは言えない代物です。タッチパネル化が望ましいのではないでしょうか。現在キンドルの下3分の1ほどが、キーボードで占められています。タッチパネル化されたら、このキーボードも不要になり、大きなスクリーンを搭載できるのに、と思いました。
キンドルは白黒画面なので、色が表示できません。正直なところ色のない世界は味気ないものです。いつかキンドルがカラー化されることを期待しましょう。
↑シェークスピア『リア王』の冒頭部。
キンドルで書籍をダウンロードし、数ページ読んで思ったのは、今自分がどの辺を読んでいるか直感的にわかりにくいことです。紙の本なら今半分ぐらい、もう少しで終わるとおおざっぱにわかります。キンドルの場合は、本に何万何千行あって、現在何行めから何行目までが画面に表示され、全体の何パーセントまで読み進んでいるという形で表示されます。過剰な正確さとでも言いましょうか。
また、紙の本には欄外にページや「第何章」という表示がありますが、キンドルには(少なくとも私が見た電子書籍には)それがありません。こうした理由で、キンドルで長編小説を読むのは難しそうです。もう少し紙の本に近づける、つまり体感できるおおざっぱな情報を与える工夫が必要では、と思われます。
また、英語の紙の本では、単語と単語の間が開きすぎないように、単語を分綴して、単語の間を詰めます。キンドルにはそのような機能はないようで、単語間があきすぎて間延びした感じになります。文字の書体も選べないので、紙面が正直言って単調です。
英語を読んでいて知らない単語があったら、その単語にカーソルを当てると意味が表示されます。本から目を離さずに言葉の意味を知ることができるので、これはとてもありがたい機能です。今は1種類の英語辞典しか設定できませんが、将来キンドルが日本語化され、日本語、英語、その他の外国語の辞典が使えるようになったら、キンドルは外国語を読む道具としてとても重宝されるはずです。
↑キンドルにはThe New Oxford American Dictionaryが標準装備されている。
↑カーソルをあてた単語の意味が下に表示される。
結論として、キンドルは本を読む道具としてはこれからという気がしてなりません。ただ、キンドルがだめというわけではありません。大きな可能性を秘めていると思われます。
特にカラーになったキンドルに、自分に必要な辞典類をたくさん入れ、情報端末専用機とすれば、外国語や専門書を読むのにとても便利なのではないでしょうか。キンドルの画面のサイズなら図版も十分入ります。パソコンで数百ページもあるpdfを読む気にはなれませんが、キンドルなら読めるはずです(たぶん)。
文庫本や新書のような本は小型で汎用性のあるスマートフォンで電車の中で読み、専門性の高い、机に向かって読む本や論文はキンドルのような電子書籍リーダーで読む、というのが将来の読書の形になるかもしれません。
ただし、楽しみとしての読書はいつまでも紙の本でしたいものです。
↑キンドルで雑誌や新聞を読むことができる。ただしモノクロ画面で雑誌を読むのは味気ない。
↑Amazon.comで、英語以外の、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語の古典作品も買うことができる。画面はヴィクトル・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』。